2013年9月11日水曜日

ろ材の必要量の目安について(1) (ろ過装置(システム)に関する私考 その9-1)


■ろ材の必要量の目安について

必要なろ材の量がろ材の種類でどのように変わるのか考えてみました。



ろ材の全表面積は、
  全表面積=ろ材の占める体積×空間充填率÷ろ材1個の占有体積×ろ材1個の表面積
で算出できます。

1.砂利・球形ろ材
砂利は球形であると仮定します。
空間充填率は、0.740(最密充填構造と仮定)です。
比表面積(=ろ材1個の表面積÷ろ材1個の体積)は、3/r(rは半径)です。

2.リングろ材
空間充填率は、0.785です。
円柱の上下底面が向かい合わないように配置するとき、半径をz1、空洞部の半径をz2、高さをhとすると、比表面積は、\frac { 2(z_1-z_2+h) }{ h(z_1-z_2) }です。
簡単のため、リングろ材の直径と高さは等しく空洞部の直径が円柱の直径の半分だとすると、比表面積は、5/z(zは半径)となります。

3.シート(平板)
ピッチ(シートの厚み+シート上下の隙間÷2)をtとします。
隙間まで含めて占有体積と考えるので、空間充填率は、1.00です。
比表面積は、2/tとなります。

4.ウールマット
繊維が半径aの円柱で、中心間距離wの最密充填構造であるとき、空間充填率は、3.626×a^2/w^2です。
比表面積は、2/aとなります。

5.ストロー(ハニカム)
ストローをギュッと詰めるとハニカム構造になります。
ストローの直径をrとすると、六角形の一辺は2πr/6、面積は√3/4(2πr/6)^2×6です。
したがって、空間充填率は1.00、比表面積は2.206/rとなります。


仮に、30×20cmの水槽に厚さ3cmで砂利(直径5mmの球とみなす)を敷く場合、砂利の占有体積は1.8リットルとなります。
これと等しい表面積を得るための各ろ材の必要量を計算してみます。

(1)リングろ材
砂利の占める体積×0.74×3/r=リングろ材の占める体積×0.785×5/z
ですから、リングろ材の直径を1cmとすると、1.018リットルが必要という計算になります。

(2)シート
シートのピッチを2mmとすると、0.799リットルが必要という計算になります。
5mmのときは、2.00リットルです。

(3)ウールマット
繊維の半径を10ミクロン、繊維間の距離(中心間距離)を200ミクロンとすると、0.44リットルが必要という計算になります。

(4)ストロー(ハニカム)
ストローの直径を5mmとすると、1.006リットルが必要となります。(18cmのストロー約312本……)


なお、上記の計算は、以下について考慮していません。
(1)表面の凹凸。
(2)有効面積。
一定の距離を下回る部分(ろ材の接触部分近傍など)は、生物膜で塞がって有効とならないと予想できます。

加えて、ろ過能力を考える際には、
(3)単位面積あたりの保持細菌数の違い。
(4)硝化反応効率・速度の違い。
水流の影響で異なってもおかしくありません。
(5)止水域における嫌気反応。
なども考慮しなくてはいけないのでしょうけれど……。


さて、上記の計算結果は、妥当なのでしょうか?


砂利は実際には球形ではありませんし、表面に凹凸があります。
したがって、比表面積はもう少し大きい値になりそうです。
ただし、眼に見えないような凹凸は生物膜で塞がってしまうので、有効な表面積とならないように思います。
すると、トータルで2~3割増しくらいでしょうか。(山勘です。)
また、現実に最密充填構造は取ることがあり得ないことは、空間充填率を下げる要因です。
ちなみに、ランダム充填の空間充填率は凡そ0.65くらいだと思われます。
他方、球から外れることは空間充填率を上げる要因となるでしょう。
全体として空間充填率がどうなるかは……わかりません。
ちなみに、空間充填率が上がれば、有効面積は小さくなると予想されます。


手元にあるリングろ材は、直径12mm・高さ10mm・空洞部4.5mmでした。
で、側面の凹みを数えてみると、134個ありました。
簡単のため凹みを直径1mmの半球と仮定すると、半球面は割平面の2倍の面積を持つので、凹みによって0.5×0.5×3.14×134=105.19mm^2だけ面積が増えることになります。
これは、側面積(12×3.14×10=376.8mm^2)の約28%に相当します。
つまり、リングろ材における凹凸による面積増加率は、微小な凹凸を無視すると、大雑把には3割くらいだと仮定できます。
また、実際にリングろ材が規則正しく充填されることはないので、空間充填率はもう少し悪いでしょう。


シート(平板)が意外と善戦した感じです。
シートに凹みを入れたり、溝を付けると比表面積を上げることができます。
孔を開けることを考えると、究極的にはウールマットのところで仮定したような状況になるので、シートのある種の極限的な状況がウールマットだと考えて良いのかも知れません。


ウールマットがやけに少量ですね。
他のろ材で凹凸を考慮すると差は縮まるのでしょうけれど。
実際のウールマットは、ランダムに繊維が絡まった状況にあるので、多少の無効領域があるでしょう。
反面、格子を仮定するともう少し面積が増える気もします。


シートと同様にストローハニカムも善戦した感じです。これは、凹凸の面で不利なのが難点です。
でも、シートと同様に目詰りがまず起こらないことを考えると悪くないかも知れませんね。
ストロー内壁に凹凸をつける方法があれば……。


ちょっと煮詰まりました。
続きは後日……。 ⇒ その2へ

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